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【2020年改正】民法が変わりました その1 賃貸借

2020年4月1日より、改正民法の施行がスタートしました。

今回の改正では主に債権分野の見直しが図られ、時効や契約に関するルールなど、日常生活に影響する変更点も少なくありません。

しかしながら、改正箇所は200項目以上にわたり、全てに目を通すのはなかなか容易ではないと思われます。

そこで、2020年改正民法の中から特に日常生活への影響が大きいと思われる変更点6つをピックアップしてご紹介いたします。

 

 

目次


【1.賃貸借契約】
・敷金は原則返還。(ただし、未払い賃料との相殺は可能)
・アパート退去時の原状回復について、通常損耗や経年変化は大家側負担に。
・賃貸借の存続期間の上限が20年→50年に。

【2.法定利率】
・年5%→年3%に。(3年ごとに見直しあり)

【3.消滅時効】
・知ったときから5年、または、行使可能時期から10年。

【4.意思能力の明文化】
・判断能力のない状態の者が行った法律行為は無効であることが明文化。

【5.約款取引の明文化】
・大量同種取引に利用される利用規約を定型約款と位置づけ、消費者が表示を受けた場合、定型約款の内容についても合意したものとみなされる。

【6.個人保証人保護規定の拡充】
・極度額のない根保証は無効。
・個人が事業用融資の保証人になる場合、公証人による意思確認手続が必要に。

 

 

その1.賃貸借契約


《敷金の取り扱いについて》
条文規定が新設され、敷金は原則返還することに。
また、そもそも何が敷金にあたるのか?という定義が明確化された。


《退去時の原状回復義務について》
アパートやマンションの借主が退去時に修繕しなければならない範囲が、条文によって明確化された。

《賃貸借期間の上限が延長》
上限が20年→50年に。


 

アパートやマンションの賃貸において、これまでは敷金の返還義務や、退去時の原状回復に関するルールが曖昧であったためトラブルに発展することも少なくありませんでした。今回の改正により、グレーだったこれらの扱いに明確な条文規定が定めれることとなりました。

まず敷金の返還についてですが、退去時に敷金から差し引いて補填が出来るのは『未払い家賃がある場合』や、『明らかに通常使用とは言えない損耗がある場合の修繕費』(ぶつかって壁に穴を開けてしまった、たばこの煙で部屋が黄ばんでしまったetc)などに限るとされました。上記のような特段の事情がない場合、原則として敷金は全額返還しなければなりません。

また、地域によって「敷金」「礼金」「権利金」「保証金」など、入居時にさまざまな名目でお金を差し入れることがあります。これまでは、名称がばらばらなためそもそも何が敷金と呼べるのかが曖昧でしたが、『担保目的ならすべて敷金にあたる』と定義されました。【民法622条の2】

そして、退居時の原状回復義務(部屋を返す時に借主がどこまで修繕しなければいけないのか?という問題)についてですが、通常使用での損耗・経年劣化(家具の設置による床のへこみや設置跡、テレビや冷蔵庫裏の黒ずみ)は大家側での負担となることが明記されました。【民法621条】(※参照:国土交通省住宅局『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』より)

最後に賃貸借期間についてですが、改正前の民法では上限が20年と定められていました。しかしながら、人生100年時代と言われるようになって久しい今日この頃。昨今ではゴルフ場の敷地として山林を借りたいなど、20年を超える賃貸借のニーズが少なくないことから、上限を50年とする大幅な見直しが図られることになりました。

 

【民法604条】
1.賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
2.賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五十年を超えることができない。

【民法621条】
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

【民法622条の2】
1.賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2.賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
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